沼尻産業創業60年記念座談会 どう描く、つくばの未来。
沼尻産業創業60年記念座談会 どう描く、つくばの未来。
沼尻産業株式会社代表取締役社長 沼尻年正

沼尻産業株式会社代表取締役社長
沼尻年正

つくば市長 五十嵐立青

つくば市長
五十嵐立青

筑波大学院生 長谷澤未来

筑波大学院生
長谷澤未来

茨城県議会議員 鈴木将

茨城県議会議員
鈴木将

沼尻産業創業60年記念座談会
どう描く、つくばの未来。

今年4月、「スーパーシティ型国家戦略型特別区域」に指定されたつくば市。先端技術を活用した地域課題の解決と、より快適で豊かな市民生活の実現を目指し、そのための大胆な規制緩和にも期待が高まる。今回の座談会は、そんな今こそ、つくばの未来を語りたいと、当社社長、沼尻年正の声かけにより実現しました。パネリストは、沼尻社長に加え、つくば市への熱い思いを持つ3人、つくば市長の五十嵐立青さん、茨城県議会議員の鈴木将さん、筑波大大学院生の長谷澤未来さん。
(聞き手:柴田敦茨城新聞社土浦・つくば支社長)

つくば市の魅力や未来像をテーマに話を進めていきたいと思います。まず自己紹介を兼ねて、皆さまとつくばの関わりをお聞かせください。

五十嵐 1978年に桜村で生まれました。生粋のつくば市民です。研究機関が集まってきたり科学万博が開かれたりして、つくばというのはすごいまちなんだと、子どもの頃から聞いて育ってきました。

しかし今のまちが本当に言われていたような期待に応えられているのかな、先人たちが思い描いた理想はまだ実現できてないんじゃないかなという思いもあって政治の世界に入りました。市議を2期やり、今は市長を務めています。

鈴木 私は筑波研究学園都市建設法施行の2年後1972年、筑波山の麓の旧筑波町に生まれ、田園や芝生の中で走り回って育っていました。
先ほど市長がおっしゃったように、科学万博があり、常磐新線の計画が見えてきたりと、世界に冠たる科学技術都市だという話をずっと聞かされてまいりましたが、私が10年程地元を離れ、海外より帰ってきた際、本当に沢山の良さを再認識する一方で、まだまだ多くの人たちが幸せになるためには、欠けているものがあるという事を感じました。

県議会議員として働かせていただき、現在3期目です。

長谷澤 2歳から22年ぐらい、つくばに住んでいます。皆さんには勝てませんが、生粋のつくばっ子だと思っています。つくばエクスプレスが通る前から知っているので、あまり何もなかった時から、鉄道の開通からどんどん栄え、研究学園都市が盛り上がり始める時代を見てきました。

一時は自分が住んでいる中心部が衰退してきているのではと感じた時期もあったのですが、最近はまた、にぎわいが戻ってきました。就職のため、来春、つくばを離れるのですが、将来は戻ってきたいと思っています。その時には、まちがもっと進化していてほしいなと願っています。

沼尻 本日は本当にありがとうございます。私は1968年に谷田部町で生まれました。祖父も父もこのつくばで生まれ育ったものですから、つくばへの愛というものがとてもあります。

五十嵐市長や鈴木県議がおっしゃっているように、私が生まれたときは、ひたすら田園風景が広がっていて、現在のまちの発展は想像を超えています。新しい住民の方も増え、まちが成熟してく中で、これからどのように発展させていくかというのが課題ではないかと思っています。
当社は、つくばで物流業をなりわいとさせていただき60年が経ちますが、当社の成長は、つくば市というまちの発展のおかげです。これからも地元に貢献しながら、つくばとともに成長させていただきたいと思っております。

つくば市長 五十嵐立青

まちづくりの方向性
つながりを力に未来をつくる

つくば市に関して、まちづくりの方向性や観光振興についてお考えをお聞かせください。

五十嵐 ちょっと硬い話になりますが、市の全分野の街づくりの指針となる「未来構想」があります。「未来構想」というのは市の最上位の計画で、羅針盤のようなものです。つくば市はこういう方向に行くんだよというものを示したものですね。

ここでは「つながりを力に未来をつくる」を大きな理念として掲げました。行政だけでまちづくりをする時代ではありません。沼尻産業さんをはじめ、素晴らしい企業はたくさんある。市民もとても多様です。そういうみなさんとともにまちをつくっていくという発想です。

そして、その目指す未来の実現に向けて必要な取り組みをまとめたのが「戦略プラン」です。つくば市が大事にしている「持続可能都市」についても織り込みながら、市民の有識者も入った審議会や、キャラバンという形の市民との対話集会、未来を担う若手職員たちのワーキンググループといった場をつくって、議論を尽くしました。これからの行政運営は基本的にはこの「戦略プラン」に依拠して進めていきます。

さらに、中心市街地に来るとどんなことが体験できるのか、市としてこのエリアで何をしたいのかを示してるものが、これまで市の計画にはありませんでした。そこで、中心市街地の目指すべき将来像やまちづくりのコンセプトを示した「中心市街地まちづくりビジョン」もつくりました。中心市街地の大きな課題のひとつに、今まで学園地区の開発は、国やURがメインとなっていましたが、国家公務員宿舎は多くが廃止されましたし、URは撤退と、鍵となるプレーヤーが不在という状況でした。

つくば市がこの現実に向き合い、行政として本気でその主体となる覚悟が無いまま時間が過ぎてしまったことを省みて、今その転換を目指しています。一方で、行政だけでは、全国で見られるように、赤字だらけのハコモノをつくり、税金がまた注ぎ込まれる、という悪循環が待っています。そこで、民間の知恵や力と、行政が連携する形でエリアマネジメントをするまちづくり会社「株式会社つくばまちなかデザイン」をつくりました。

その際に、つくばに根を張る民間企業の沼尻産業さんにお願いをし、関彰商事さん、LIGHTzさんとともに出資をしていただいています。また、多様な働き方を支援する拠点として、同社が管理運営する「co-en」(コーエン)が今年5月にオープンしました。

今まさに、座談会を行っているここです。隣にはすてきなカフェがあり、他の人と場所を共有して仕事をするコワーキングスペースも備えています。コロナによるリモートワーク拡大の影響もあって利用は好調です。シェアオフィスという形で貸しオフィスもやっていますが、すでに満室になりました。進んでいる方向性は間違いなかったと思っていますし、沼尻産業さんからも出向していただいていますが、まちづくり会社の社員さんたちもとても頑張ってくれています。

鈴木 コロナ禍以前は、国内はもとよりインバウンドを呼び込む取り組みなど、各自治体躍起になり競い合っていましたが、茨城県内で自他ともに認める筑波山という資源を、まだまだ生かしきれてないと思っております。

県内観光の取り組みの一つとして、観光消費動向がモノからコトへ移っています。筑波山では、サイクルツーリズムによる観光客の呼び込みを連携しており、2019年に、「つくば霞ヶ浦りんりんロード」が第1回の「ナショナルサイクルルート」に指定されました。安全快適なハード整備とともにソフト事業もしっかり進めてきたことによって評価も上がり、競技レベルの方々ばかりではなく、観光の方、そして地元の一般の方にも活用していただけるようになっています。

筑波山のヒルクライムルートにも力を入れており、市内平沢地区より不動峠に通じる県道石岡つくば線に於いては、私が土木企業委員長を務めました3年前より路面改修や休憩スポット、矢羽根案内看板などの整備を進め、サイクリストの間でも大変好評を博し、大きな魅力発信の場所となっています。

現在、県内には海岸線あるいは湖畔を走るルート、更には利根川、鬼怒川、小貝川の管理用道路に快適なサイクル環境を整備しようという動きも広がっていますが、滑走するサイクリストの増加に伴い、地元の方々が危険な思いを感じることがないよう、マナー向上対策を充実させていくことで理解をいただくことも大切な課題です。

筑波山に関しては、行楽シーズンの渋滞対策は喫緊の課題です。ここ数年は、登山道の改修も進め、密を避け安全に楽しんでいただける環境と、御幸ヶ原の二つのトイレの全面改修と歩行面のバリアフリー化の整備も致しました。

多様化する国内外の観光需要に応えていくためには、お車で、電車で、さらには茨城空港にお越しいただく皆さんが、連携強化しております北関東自動車道沿線の各地を堪能していただきたいですし、今後の茨城観光の振興に向けて、更に磨き上げていきたいと思っています。

五十嵐 まさに周辺地区のポテンシャルは高いと感じます。まちには、求心力ではなく、遠心力を働かせたいと考えています。構造的にヒト・モノ・カネは真ん中が吸い寄せますが、それを逆にすることで、まちに持続可能な力を付けられるんじゃないか。旧町村時代に役場や商店街があった場所では、人が減り様々な活動ができなくなっている。そこで、まず旧町村の中心だった8地区で地域のみなさんと一緒にいろいろなイベントやマルシェ、まちづくり活動に取り組んでいます。長谷澤さんのような人が、県外にわざわざ行かなくても、こんなに近くで魅力があるんだったらちょっと顔出してみようかな、なんていうことにつながっていけばいいと思っています。

つくばはそういう意味では、まちの中でのポテンシャルがすごくあると思います。市外から人を呼んで来なくても、中心部の大きな人口が周辺地区を訪れるだけでインパクトは大きい。手始めに今、上郷周辺地域でスマートフォンを使った電子スタンプラリーをやっています。若い人からも好評のようです。そんな取り組みをきっかけとしてでも、一度訪れてもらえたら、まちとして次の段階に進めるのかなと思います。

長谷澤 つくばのいいところはやっぱり平和に過ごせることかなと思います。地味な感想で恐縮ですが平和に過ごせることはとても大切なことです。本当に伸び伸びと過ごせます。筑波大の周りは、いわば学生街ですから、コンパクトにそこで生活が完結してというのも学生的にはいいところだなと感じます。その一方で車があるかないかがとても大きいのです。学生街から出られるか出られないかで、生活の質に大きな差があらわれていると感じます。その意味では、先ほどうかがった周辺地区の価値や取り組みに気づきにくいかもしれません。東京へのアクセスの良さが、逆に市内への関心を薄めている部分もあるとは思いますが。

沼尻産業株式会社代表取締役社長 沼尻年正

企業にとっての可能性と発展性
つくば市のポテンシャル

沼尻社長に伺います。企業がつくば市にあることの優位性や可能性を教えてください。

沼尻 弊社は祖父と父の代の1962年につくばで創業しまして、最初はつくばから秋葉原の市場に野菜を運んでいました。そこから、住宅建材や精密機械、食品、医薬品やアパレルなど、扱い品目は多岐にわたり、現在では27拠点、社員数が400人ぐらいの企業規模になりました。この成長は、何よりもつくばの物流拠点としての立地的優位性が一番大きかったと思っています。
圏央道が開通して、茨城と千葉、埼玉、東京、神奈川がつながりました。それによって東関東、常磐、東北、関越、中央、東名と6つの高速道路と接合でき、時間的距離がものすごく縮まりました。ますますこのつくばの優位性が高まるだろうと思います。

物流センターといっても、今は保管するだけではなく流通加工などのアセンブリなどもしていますから、100人、200人単位で雇用が発生します。物流というのは、あくまでフィジカルな業態ですから、これからもなくてはならいない産業のひとつとして、世の中のライフラインとしてますます重要視されていくだろうと感じています。

五十嵐 一言付け加えさせてください。沼尻産業さんには、つくば市では雇用の面で貢献いただいてることに加えて、まさに物流の力をお借りしています。例えば市の医療機関へのコロナワクチンの配送は全て、沼尻産業さんにやっていただいています。チームを組んで緻密に運用をしていただいたおかげで接種が順調に進みました。

公文書の管理もお願いしています。市の倉庫がない中で、沼尻産業さんの文書管理できるセンターをお借りしているんです。今までは職員が市の倉庫に行って必要なものを探さなくちゃいけなかったのですが、今は「あの文書見たいんですけど」って言えば、それを届けていただけますから、職員の負担が大幅に減っています。そういうふうに、市民の生活に密接に関わるところで支えてくださるのは本当にありがたいことです。

まちづくり会社への出資について、狙いや現時点での評価をお聞かせください。

沼尻 つくば市の発展とともに成長してきた当社ですから、かねてから市への恩返しと言いますか、貢献をさらに深めていきたいと思っていました。コロナワクチンの配送や公文書の保管を担わせていただく中で、もっと踏み込んでまちづくりに貢献したいなというところもありました。たまたま、これからつくばの中心市街をもっと活性化したいというお話をいただいたものですから、これはもう我々としてもまたとない機会ですし、新たな学びです。また、物流を超えたビジネスを模索していける大きな機会ととらえ、「つくばまちなかデザイン」に出資し、人材出向もさせていただいたということです。

市長も非常にご苦労されたと思うんですけれども、やはりこういう一つのものが形になって結果に表れてくると、みんなの気持ちも変わってくるんじゃないでしょうか。そんなうねりを少しずつ感じています。

茨城県議会議員 鈴木将

はじまる社会実装
未来のまち、スーパーシティ

つくば市が「スーパーシティ」に選ばれ、「未来のまち」への取り組みがスタートします。

五十嵐 そもそもこれは国の特区の制度です。規制を緩和し、新しいいろいろな技術を使って市民の困っていることを解決しようということで、つくば市と大阪市が指定されました。市民が幸せに暮らすための選択肢を増やすことを目指しています。

大きくは、まず重点エリアをつくります。つくば駅周辺、筑波大学周辺という子育て世代や学生が多いエリアと、旧筑波町の小田と旧茎崎町の宝陽台という、高齢化率が高まっている既存の市街地や住宅地を選びました。

さきほど、長谷澤さんのお話にもありましたが、移動ができないということは市民生活の大きな制約となっています。高齢者の目線で見れば、車がないと出掛けられないという状況を何とか解決しなくちゃいけないと思っています。例えば自動走行の電動車椅子が遠隔操作できれば、それに乗ってバス停まで行けたり、スーパーに行ったりできるようになる。あるいは、医療機関と連携して、スマートフォンで病院の予約をしたら、その時間に自宅までタクシーが迎えに来てくれる。そうすると病院には自動運転の車椅子が待っていて、顔認証で受付を通らずに直接診察室まで連れて行ってくれる。帰りの会計も不要で、登録してあるクレジットカードや銀行口座から引き落とされる。お薬も薬局に行かずに、後でドローンで自宅まで運ばれてくる、といったことを目指しています。夢物語のようですが、技術としては、部分部分ですでにできているんですね。

ただ、技術的には可能でも、様々な法規制があり、現在そのままを行うことはできません。そういった規制を緩和して、一気通貫でつなげていくのがスーパーシティの目指すところです。

他にもつくば市が力を入れてるものにインターネット投票があります。これだけスマホが普及しているのだから、投票もスマホでできれば、という声を多くいただきます。市では2018年から日本で最初に、マイナンバーカードとブロックチェーンという技術を組み合わせて投票の実証実験を行ってきました。

技術的にはスマホで顔認証できるところまできていて、昨年は並木中等教育学校の生徒会選挙で使いました。特に学生さんなどからは、自分の投票所がどこにあるか分からないなんていうこともよく聞きますが、わざわざ投票所に出向かなくてもよくなります。

投票率の低さは、若い人だけの問題かというとそうでもなくて、年代が上がるにつれ右肩上がりで上がっていくんですけれども、80代になると、これがガクンと下がる。これは投票所に行けないことが大きな要因です。あるいは、障害があって投票所まで行くことにとても大きなハードルがある。選挙は民主主義の基盤です。スマートフォンやタブレットがあれば、誰でも投票できるというような環境を整えたいですね。

ただ高齢者のみなさんの中には、スマホを使ってと言われてもなかなか難しいのも本当です。そこで、地区でスマホ教室を開いて筑波大学の学生さんたちに活躍してもらったり、地域の中で得意な方がいてみんなで教え合ったりという取り組みをしています。

鈴木 スーパーシティの指定を受けたことは、大変喜ばしいことと同時に責任も大きいと感じます。

国が提唱する「ソサエティ5.0」という、仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会世界を目指してる中で、スピード感を持って実績を示していく必要性から今回の構想が出てきたと考えます。

暮らしの利便性でいうと地域間の格差は拡大しており、人口減少が進む地域では技術革新の社会実装が進むことで課題を解決し、茨城全土に於いて自然環境豊かな地元の良さをあらためて実感してもらえるのではないでしょうか。情報や技術に関して、一部の人たちのみが活用できるということではなく、高齢者の方々においても無意識にその技術を享受できる時代を実現することが必要です。

日本が国際社会の中でかつてのような輝きを失っているように感じられる中で、本来の科学技術立国としての日本再生により、世界のリーダーとして甦ること。そのためにも、つくばにおける「スーパーシティ」の成果を支える市民、県民の皆様の理解や合意形成を図っていくことは、私の大切な役割だと思っております。

長谷澤 私は「科学のまちつくば」と刷り込まれてきましたので、スーパーシティぐらいのことはやってくれて当然だと考えていますし、基礎的な生活がすごい豊かになるのかなと、楽天的な期待もしていますが、構想の対象のメインが、高齢者とか子育て世代向けに見えてしまう懸念があります。学生の立場から見ると、自分たちにどんなメリットがあるのか、ぱっと見では伝わらない点があります。例えば物流でしたら、宅配便が全然受け取れないといったことで悩んでいる友人がいますが、それがドローンで解決するのなら、すごく良いことだと感じますし、市の広報誌などはまず見ない、市外や県外から来ている学生たちにも、防災とか投票とか、外から来た人にも簡単に届くようになったりなど、多くのメリットは想像できます。ただ、まちづくりについて学んだり、そうしたことにアンテナを張ってる自分や身近な人は、そのへんの情報を持っていますが、サークルの友だちや他の専攻の人はぜんぜん知らないんじゃないでしょうか。そんな彼らにも、「スーパーシティ」のメリットを伝えて、巻き込んでいけたらいいと思います。

五十嵐 今年の4月に、いろいろな行政サービスを提供するために『つくスマ』というアプリを作りました。どんな機能があれば学生さんも入れてみようかなって思うでしょうか。

長谷澤 自分は入れたんですけれど、本当に日常的に使う便利な機能があったらいいと思います。例えば、病院、どこ行ったらいいのかなど、調べるだけじゃなくて予約までできちゃうとか。なにか本当に困ったときの日常生活にこれがあれば絶対安心みたいな存在になれば使ってくれるでしょうね。

五十嵐 ありがとうございます。いずれはそういうところまで充実させたいです。例えば子どものワクチンの接種の管理は、とても大変なんですよね。母子手帳にいろいろな種類のワクチンの記録が入っていますが、私は次の接種の時期を忘れちゃったりしました。

でも、子どもの年齢をアプリに登録しておけば、必要な月齢になったら「このワクチンの接種時期ですよ」というような通知がスマホに送られるようにしたいと思っています。そこから、まさに長谷澤さんが言ったように、行きつけのクリニックの予約ができるようにすれば、より利便性が高まると思います。

沼尻 われわれは交通インフラ部会というのに入会させていただいています。それで買い物困難者のための移動スーパーであるとか、他地域に先駆けてロボットやドローン配送などが可能になるはずですから、今からしっかり経験と知見を積んでおきたいですね。

気掛かりなのは、地元の企業参加が少ないことです。大手は沢山いるのですが、地元はもう圧倒的に少ない。敷居が高いんでしょうか、もっと宣伝していただいて、多くの地元企業の参画に期待していますし、そのうえで、大手と地元の企業の連携なんかも考えていただきたいところです。

なぜなら、最終的な運用は多分地元の企業になるんじゃないかなと考えているからです。地元産業の活性化にもつながると思うので、そういった座組みや取りまとめというところのリーダーシップっていうのをもうちょっと強烈にやっていただけたらと思っています。

筑波大学院生 長谷澤未来

持続可能な都市とは?
枠を超える、横断的な取り組み

つくば市の未来像について、どのように考えておられるでしょうか。

五十嵐 私が一番大事にしているのは、市の未来像や実際の事業を市民と「ともに創る」ということなんですね。冒頭も少し申し上げましたけれども、つくば市がこんな街であったらいいという理想像にはまだ行き着いていません。つくばには、研究学園都市建設、科学万博、つくばエクスプレス開業という大きな3つの事業がありましたが、どれも基本的には国や他の主体が中心となって動いてきたものでした。

この先、もう誰かが主導してくれる大型事業はないと考えています。ここから先は、つくば市が自分たちの足で歩いていく時代です。当然それは、鈴木県議のような方のお力をお借りして県とも調整をしながらです。長谷澤さんには以前筑波大学の授業で住民投票やスーパーシティの進め方についてすばらしい提案をしてもらったこともありますが、各地から来ている学生の皆さんにも活躍してもらうことはつくばの力になります。そして、先程お話したように沼尻産業さんにはすでに行政の対等なパートナーとしてとてもお世話になっていますが、地域をリードする企業として今後も発展していただきたいと思います。そうやって、みんなでつくばのまちの力を高めていきたいと思います。

鈴木 沼尻産業さんに於かれましては、本当に毎年のように新しい拠点が生まれ、拝見させていただき、その熟度やスピードに大変感心しています。私は物流の概念を昔のイメージで捉えていたのですが、もはやかつての物流ではなく、物流の枠を超えて企業サプライチェーンの一翼を担っていますよね。行政や政治もこれにならって、これまでの枠を超えた横断的な思考や取り組みが必要です。

県としても、これからも新たな企業も誘致し、沼尻産業さんはじめ地元の企業とのコラボレーションで新たな活性と価値観を生み出してほしいです。

つくばで芽生える新たな技術が、世界の最先端であり世界の課題を解決していく使命も担うくらいの、市民の皆様の理解をいただきたいと考えます。当然、社会実装の過程で取り扱わせていただくビッグデータといわれる個人情報や個人の行動、消費履歴の適正管理もしっかりとしていくことが大前提になります。最先端の技術を最初に活用し利便性を手にすることができるメリットを皆さんと共有しながら、これからも前に向かっていきたいですね。

人間が想像できることは、人間が必ず実現できると言われますが、手塚治虫先生が描いた「鉄腕アトム」の時代設定は2030年、藤子不二雄先生が設定したドラえもんの誕生にも100年をきりました。偉大な漫画家の想像力に負けないくらい人類は進化していく。沼尻社長や社員の皆様の経営ノウハウを参考に、長谷澤さんや市民の方々にも知恵をいただきながら、市長が中心になって、県もしっかり伴走していきます。

長谷澤 学生は、別の地域から来る人も多いわけですが、ずっとそのままつくばにいてくれるわけではありません。当然、出ていく人も多いです。そんな中で私が考えるのは、出ていってからもつくばに関わってくれる人、いわゆる関係人口の卵を、いっぱい育てるのが大切だということです。在学中につくばのすごさや魅力に気付いて愛着を持ってもらい、いつかまた戻ってきたいなとか、定住はしなくても関わっていきたいと思ってもらえるような工夫。
例えば、彼らの日常の生活圏とは異なる、市の多様な面と関わり方ができる授業などによって、まちを好きになるということもあると思います。そんな取り組みが増えて、つくばの未来に関心を持ちつづけてもらえる人が増やしていきたいですよね。

※【関係人口】地域内にルーツがあったり、勤務や通学、居住経験や滞在など、地域となんらか関係を持つ人の数。少子高齢化対策や、地域づくりの担い手として期待されている。

沼尻 つくばの未来に関して考えていることが三つあります。一つは20代の頃の海外での経験から、日本のみの視点に留まらず、グローバルな視点で、つくばを見て考えて発想していただきたいなというふうに思っています。

先ほども言ったように東京、千葉、神奈川、埼玉が圏央道でつながったわけです。高速道路で2時間以内で行けるのですが、そこにおよそ4000万人が住んでいます。全国のおよそ30%の人口が集中していて大消費地ですよね。こういう中にいるということと、上海とか台湾とか韓国とかウラジオストクとか、茨城空港や成田空港から3時間以内で行けるところの人口が2億人強。こうした考え方はマーケティングする上でもとても大事なことです。2億人で発想するのか25万人で発想するのか、スケールがまるで違ってきます。つくばが本当の意味での国際都市に発展してほしいと期待しております。

二つ目は、昨年12月に、われわれはSDGs宣言をしました。また、今年1月に「つくばSDGsパートナーズ」に加盟させていただきました。これから喫緊の課題は、脱酸素です。メインバンクの常陽銀行様にコンサルタントをお願いして、ちょうど今月から当社の脱炭素の測定を始めました。化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替えが求められています。

三つ目は、やはり皆さまおっしゃったように、日本で唯一とも言える、つくばならでの「知の集積」。この優位性を最大限生かしながら、産官学連携の持続可能なつくばのまちづくりにこれからも貢献したいと考えております。

本日は、お集まりいただきありがとうございました。多くの課題があるのは当然としても、つくばの明るい未来へのたくさんヒントをいただき、皆さんのポジティブなご意見にとても勇気づけられました。まさにこれからです。引き続きよろしくお願いいたします。

沼尻産業創業60年記念座談会「どう描く、つくばの未来。」

【つくば市】1987年に谷田部町、大穂町、豊里町、桜村の3町1村が合併して誕生。88年に筑波町、2002年に茎崎町が、それぞれ編入された(町村名はいずれも当時)。常住人口は、今年6月1日付で25万人を超えた。

2022年10月現在

N’ Vision 2022-2032-物流で人々を幸せに。

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